トップページ > 学ぶ > 第一章「スイッチ」 第一話

学ぶ

第一章「スイッチ」 第一話

5:45a.m。体を引きずるように山手線から降りる田中さん。
月曜日の営業定例会議まであと15分。

社員200名。会員制リゾートクラブを運営する中堅の会社に就職して20年。
「マーケティング部、アドバイザー」横書きにするとお洒落な響きですが、訪問販売で500万円からの会員券を売るのが仕事。今時珍しいほど、ベタな営業職です。

5:57分。お腹周りのお肉のせいでしょうか、ゼイゼイいいながら席に着く田中さん。
打ち鳴らされる大太鼓の音を合図に、営業部員が壁に向かって整列を始めました。

「それでは、4月度 営業部、定例会をはじめます」司会進行役の声のあと、「ひと~つ、嘘をつくな」100名の部員全員が同じ方向を向いて一心不乱に社訓を絶叫する様は圧巻です。
「今月の数値目標、まずは一斑から」営業本部長の声が部屋に響きます。
「営業三課 田中 4月度目標 1000万、必ずやり切ります!」絶叫する田中さん。
また胃の痛くなる日々の始まりです。

次に壇上に上がったのは人事部長。咳払いをしながらこう述べたのです。

「え~、この度TOEICの点数を査定の一項目として、評価させてもらいます。
営業部の皆様は、500点以上を目標にがんばって頂きたいと思います」田中さん、思わず口が半開きになりました。

ハッ? トーイック?思わずつぶやく田中さん。周りの営業部員も一様にポカーンとした顔をしています。
それもそのはず、朝っぱらから大太鼓を打ち鳴らすコテコテの営業部にTOEICなど、青天のヘキレキです。

司会の声が一段、高くなりました。「では最後に、社長より諸君にお話があります」
「朝早くから、ごくろうさん。え~、諸君ご存知の通りわが社は創立以来70年、日本のお客様を対象にリゾートライフを提供して参りました。しかし昨今、07年には830万人の旅行客が日本を訪れ、2010年には東京の人口に匹敵する数の外国人旅行者が訪日するかもしれません。
箱根、伊豆、日光。日本を代表する観光地にある、我々のサービスを外国人旅行者にも提供できるよう、諸君にも是非、国際語である英語に慣れ親しんで頂きたい」

これをきっかけに今後、自分の人生が大きく変わろうとしていることにまだ、何も気がついていない田中さんでした。

※補足)ビジットジャパンキャンペーン

更新:2009年4月 8日 08:29 PM

>次へ「第一章 「スイッチ」第二話」